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デジタル化とリモートワークの普及が変える日本の就業形態

更新日:7月13日




1. イントロダクション


日本の労働環境は歴史的に非常に独特で、特に「終身雇用」や「年功序列」といったシステムが長く主流だった。このシステムにより、労働者は一つの企業で長く働き続けることが求められ、企業は従業員の忠誠心を重視してきた。しかし、長時間労働や過労死といった過酷な労働環境が問題視されることも多くあった。

近年、働き方改革が進み、多様な就業形態が認められるようになっている。デジタル化とリモートワークの普及は、日本の従来の労働環境と就業形態に大きな変革をもたらしている。特にコロナ禍を契機に、デジタルツールの導入とリモートワークの普及が急速に進んだ。デジタルツールはコミュニケーションの円滑化や業務の効率化に大きく寄与し、リモートワークの普及により、従業員は自宅やカフェなどオフィス以外の場所で働くことができるようになった。これにより、通勤時間の短縮やワークライフバランスの向上が期待されている。

一方で、リモートワークの導入に伴うコミュニケーションの課題や労働時間の管理といった新たな課題も浮上している。しかし、これらの変化は特に若い世代や海外からの人材にとって歓迎されており、柔軟な働き方が可能になることで、日本での就職を検討する外国人労働者にとっても魅力的な労働環境が提供されている。

当記事では、デジタル技術の導入などによって生じた日本企業の働き方の変化について紹介する。


2. リモートワークの増加


2.1 日本におけるリモートワーク浸透状況


コロナ禍以前、日本の労働環境においてリモートワークはまだ一般的ではなかった。多くの企業が対面でのコミュニケーションや出勤を重視しており、リモートワークの導入は進んでいなかった。しかし2020年のコロナウイルスの大流行により、状況は一変した。

コロナ禍以降、多くの企業がリモートワークを導入し、業務の継続性を確保した。この期間中にリモートワークの利便性や効果が認識され、リモートワークの導入が急速に進んだ。今では、リモートワークは一時的な措置ではなく、持続可能な働き方の一つとして定着しつつある。特にIT企業やベンチャー企業では、リモートワークの、従業員の柔軟な働き方を支えている。

以下のグラフは、日本の民間企業におけるリモートワーク導入率の推移を示したものである。


図1:日本の民間企業におけるリモートワーク(テレワーク)導入率の推移*1


2016年から2019年にかけて、日本企業のリモートワーク導入率は緩やかに増加しており、2019年には20.2%に達していたが、コロナ禍を機に急激に増加した。2020年から2022年にかけて、日本企業のリモートワーク導入率は約50%の高水準で安定しており、2023年にかけてさらに上昇した。2023年11月現在、その導入率は66%を超えている*1

次に、リモートワークを実施している各国の労働者の割合の推移を示したグラフを以下に示す。


図2:日本、アメリカにおいて定期的にリモートワークを行う労働者の割合の推移*2


2020年のコロナ禍以降、リモートワークを実施している日本国内の労働者の割合は大幅に増加している。コロナ禍前の13.3%(2016年)から27%(2021年)に急増し、その後も30.7%(2023年)と高い水準を維持している。

アメリカに関しては、2022年から2023年にかけてリモートワーク労働者割合が微減している。日本・アメリカ両方で当傾向が続くと仮定し、2023年の対2022年比率(30.7% / 27% ≈ 1.137)を2023に乗じて2024年の値を試算すると、日本のリモートワーク率は、2023年のアメリカのリモートワーク割合である35%に並ぶ可能性さえある(30.7% × 1.137 ≈ 34.9%)。 

なお、日本経済新聞の調査によれば、日本における2024年のリモートワーク率は2023年よりも高まると見込まれている*3。今後も日本企業のリモートワーク導入率の増加が続けば、リモートワークへの許容の素地がますます広がっていくだろう。


リモートワークのメリット:

  • 通勤時間の削減:従業員は通勤時間を削減でき、その時間を有効活用することができる。

  • ワークライフバランスの向上:リモートワークにより、従業員は家庭や個人的な時間をより大切にすることができる。

  • 業務の効率化:集中して作業に取り組むことができ、業務効率が向上する場合がある。



2.2 リモートワークがオフィス文化に与える影響


コミュニケーションの変化:

リモートワークの導入により、コミュニケーションの方法も変化した。対面での会議やディスカッションが減少し、オンラインでのコミュニケーションが増加した。これにより、コミュニケーションのスピードや方法が変わり、デジタルツールの活用が重要となっている。


チームビルディングの方法:

リモートワーク環境では、チームビルディングの方法も変化している。物理的な距離があるため、従来の方法ではなく、オンラインでの活動やイベントを通じてチームの一体感を高める工夫が求められる。



3. コロナ禍で露わになったデジタル化の遅れとその改善


3.1 日本企業のデジタル化の遅れ


デジタル化の遅れの原因

コロナ禍以前、日本企業のデジタル化は他国に比べて遅れていると指摘されていた。主な原因として、以下の点が挙げられる。


  • 保守的な企業文化:新しい技術やツールの導入に対して慎重な姿勢が強く、変化を嫌う文化が根付いていた。

  • 紙文化の根強さ:多くの業務が依然として紙ベースで行われており、デジタル化への移行が遅れていた。

  • インフラの未整備:リモートワークを支えるITインフラやセキュリティ対策が不十分であった。

  • セキュリティに対する警戒心:日本企業は特にサイバーセキュリティのリスクに対して強い警戒心を持っていたため、サイバー攻撃などの懸念を受けてデジタルツールの導入に慎重な姿勢を取っていた。


コロナ禍が与えたデジタル化へのインパクト

コロナ禍により、企業は急速にデジタル化を進める必要に迫られた。リモートワークを導入するためには、ITインフラの整備やデジタルツールの導入が不可欠となり、多くの企業がこれに対応した。結果として、以下のような変化が見られた。


  • デジタルツールの急速な導入:ビデオ会議ツールやコラボレーションツールが急速に普及し、業務のデジタル化が進んだ。

  • ITインフラの整備:リモートワークを支えるためのクラウドサービスやセキュリティ対策が強化された。


3.2 デジタル化の促進


政府や企業による取り組み

日本政府や企業は、デジタル化の遅れを取り戻すためにさまざまな取り組みを行っています。特に、以下のような施策が進められている。


  • デジタル庁の設立:日本政府はデジタル庁を設立し、デジタル化推進のための政策を策定・実行している。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)推進:多くの企業がDXを推進し、業務プロセスの見直しや新しいビジネスモデルの構築を進めている。


成功事例

いくつかの企業は、デジタル化の取り組みを成功させ、業務効率や生産性の向上を実現している。以下はその例。


  • 製造業のデジタル化:製造プロセスにIoT技術を導入し、リアルタイムでの生産管理や品質管理を実現している企業が増加している。これにより、機械の稼働状況の監視や異常検知が迅速に行えるようになり、生産効率が向上している。例えば、トヨタ自動車は、Microsoft Power Platformを活用して現場主導のアプリ開発を進め、40以上のアプリを独自開発し、生産ラインの最適化を図っている*4。当取り組みにより、生産性の向上率は約20%に達し、品質管理の効率化も実現されている。​

  • サービス業のデジタル化:オンライン予約システムやデジタルマーケティングを活用し、顧客体験の向上と業務効率化を達成している企業が増加している。顧客データの分析により、パーソナライズされたサービスの提供が可能となっている。例えばファミリーマートは、無人決済システムを導入し、店舗運営の効率化を図っており、当システムにより、レジ待ち時間の短縮や人件費の削減が可能となり、顧客満足度の向上にも寄与している*5

  • 物流業のデジタル化:配送ルートの最適化や在庫管理の自動化により、物流効率が大幅に向上している。GPSやトラッキングシステムの導入で、配送状況のリアルタイム把握が可能になり、顧客サービスが向上している。例えば日本通運は、NECの「関税計算書システム」を導入し、通関業務をデジタル化したことにより、AI-OCR技術を用いてインボイスなどの帳票を自動データ化し、関税計算や申告書作成の効率を大幅に向上させている。導入後、作業時間は体感で約30%削減され、業務品質の向上や属人性の排除にも貢献していることが報告されている*6。​



4. 理解すべき日本の職場進化のポイント


4.1 日本の職場がどのように進化しているか


働き方改革

日本政府は近年、労働環境の改善と生産性の向上を目指して「働き方改革」を推進している。この改革は、従業員がより柔軟に働ける環境を提供し、ワークライフバランスを向上させることを目的としている。具体的な取り組みには以下が含まれる。


  • 残業時間の規制:残業時間の上限を設け、過労死を防ぐ取り組みが行われている。

  • 有給休暇の取得促進:従業員が有給休暇を取得しやすい環境づくりが進められている。

  • テレワークの推進:リモートワークの普及を支援し、柔軟な働き方を実現するための施策が導入されている。


詳しい労働時間の改善状況については「日本の労働時間は長いのか?」を確認。


フレキシブルワークの導入

働き方改革の一環として、多くの企業がフレキシブルワークを導入している。これにより、従業員は自分のライフスタイルに合わせて働く時間や場所を選ぶことができるようになった。具体的には以下のような形態がある。


  • フレックスタイム制:始業・終業時間を従業員が自由に選べる制度。

  • テレワーク:自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所で働くことができる制度。

  • 短時間勤務:家庭の事情や育児・介護などに対応するために、通常より短い労働時間で働くことができる制度。


4.2 グローバル人材に求められるスキルと適応方法


デジタルスキル

現代の労働環境では、デジタルスキルの重要性が増している。特に以下のスキルが求められる傾向がある。


  • 基本的なITスキル:Microsoft OfficeやGoogle Workspaceなどの基本的なツールの使い方。

  • プログラミングスキル:IT業界で働く場合、プログラミングスキルは必須となる。Java、Python、C++などの主要なプログラミング言語を学ぶことが推奨される。

  • デジタルマーケティングスキル:SEO、SNSマーケティング、データ分析などのスキルは、特にマーケティング分野で重宝される。


リモートワークスキル

リモートワーク環境で効果的に働くためには、以下のスキルが重要。


  • 自己管理能力:リモートワークでは、自己管理が重要である。時間管理やタスク管理のスキルを身につけることが求められる。

  • コミュニケーションスキル:リモート環境では、対面でのコミュニケーションが難しいため、オンラインでのコミュニケーションスキルが必要である。メールやチャット、ビデオ会議ツールを活用して効果的に情報を伝える能力が求められる。

  • テクノロジーリテラシー:デジタルツールを活用するための基本的なテクノロジーリテラシーも重要である。



5. 生成AIの導入と活用


5.1 生成AIの概要と導入状況


生成AIとは

生成AI(Generative AI)は、人工知能の一分野であり、新しいデータを生成する能力を持つモデルを指す。これには、文章生成、画像生成、音楽生成など、さまざまな形式のデータが含まれる。生成AIはディープラーニング技術を活用しており、特定のパターンやルールに基づいて新しいコンテンツを自動的に生成することができる。意外なことに日本は他国に比べ生成AIの活用に対する抵抗感が少なく、実際に業務に組み込む事例も徐々に増えている。


日本企業における生成AIの導入例

日本企業においても生成AIの導入が進んでおり、さまざまな業界で活用されている。以下はその具体例である。


  • マーケティング分野:広告文やキャッチフレーズの自動生成、SNS投稿の自動作成などに生成AIが利用されている。

  • エンターテインメント分野:自動的に楽曲を作成するAI作曲家や、ストーリーを生成するAIライターなどが活用されている。

  • 製造分野:新しい製品デザインのプロトタイプを生成するために、生成AIが利用されている。


5.2 生成AIがもたらす職場の変革


業務効率化のための活用

生成AIは、さまざまな業務の効率化に寄与している。具体的な活用例として以下が挙げられる。


  • デザイン作業の効率化:新しいデザイン案をAIが自動生成することで、デザイナーの作業負担を軽減する。

  • データ解析の自動化:大量のデータからパターンやトレンドを自動で抽出し、ビジネスインサイトを提供する。


新しい職種や役割の創出

生成AIの導入により、新しい職種や役割が生まれている。これにより、従来の仕事の範囲が広がり、より高度なスキルが求められるようになっている。


  • AIスペシャリスト:生成AIモデルの開発や運用を担当する専門職。

  • データサイエンティスト:生成AIを活用してビジネス上の問題を解決するためのデータ分析を行う職種。

  • コンテンツクリエイター:AIが生成したコンテンツを監修・編集する職種。


5.3 グローバル人材が生成AIを活用するためのスキル


生成AIに関する基本知識

生成AIを活用するためには、その基本的な知識を身につけることが重要である。具体的には以下のような内容が含まれる。


  • 機械学習とディープラーニングの基礎:生成AIの根幹となる技術を理解すること。

  • 生成モデルの種類:GAN(Generative Adversarial Networks)やVAE(Variational Autoencoders)など、主要な生成モデルの仕組みと応用例を学ぶこと。


生成AIツールの活用方法

実際に生成AIを業務で活用するためには、具体的なツールの使い方を習得する必要がある。


  • プログラミングスキル:PythonやRなど、生成AIを扱うためのプログラミング言語を学ぶこと。

  • AIプラットフォームの利用:Google Cloud AI、AWS AI、Microsoft Azure AIなどのクラウドベースのAIプラットフォームを活用するスキルを身につけること。



6. Jelper Clubに登録している企業の状況


提携企業のデジタル化とリモートワークの状況

Jelper Clubには、多くの企業が登録しており、学生に多様なキャリア機会を提供している。特にデジタル化とリモートワークの推進に積極的な企業が多く、柔軟な働き方を重要視する学生にとっては魅力的である。実際に「Jobs」にてWork TypeでRemoteとHybridの条件を選択すると、エンジニアやプロジェクトマネージャー、ベンチャーキャピタリストなどのポジションを複数の企業が登録していることが確認できる。また、Jelper Clubでは今後も多くの魅力的な企業がさまざまなポジションの登録を行っていく予定である。是非頻繁にチェックして欲しい。



7. 結論


日本の労働環境は、歴史的に「終身雇用」や「年功序列」に代表される独特なシステムに支えられてきた。しかし、近年のデジタル化とリモートワークの普及により、これまでのシステムが大きく変わりつつある。特にコロナ禍を契機に、デジタルツールの導入とリモートワークの普及が急速に進み、通勤時間の削減やワークライフバランスの向上など、多くのメリットがもたらされている。

一方で、リモートワークの導入に伴う新たな課題も浮上しており、コミュニケーションや労働時間の管理といった問題が顕在化している。それでも、これらの変化は特に若い世代や外国人にとって歓迎されており、柔軟な働き方が可能になることで、日本での就職を検討する海外の高度人材にとっても魅力的な労働環境が提供されていると言える。

Jelper Clubでは今後も働き方としてデジタル化とリモートワークの推進に積極的な企業の登録を行い、多様なキャリア機会を提供していく予定である。デジタルスキルやリモートワークスキル、さらには生成AIの活用スキルを身につけることで、グローバル人材として日本の進化する職場環境に適応し、成功することができるようになるだろう。



出典・注記


1. 「令和5年 情報通信に関する現状報告の概要 第2部 情報通信分野の現状と課題」(総務省):https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nd24b220.html

「コロナ5類移行でテレワーク制度はどうなった? 全ての世代で9割以上が「継続したい」と回答」(@IT):https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2312/04/news033.html#:~:text=COVID%2D19%E3%81%AE5%E9%A1%9E,%E3%81%AF8.8%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E4%B8%8A%E6%98%87%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

2. 「令和4年度テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)-」(国土交通省):https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001598357.pdf; "The productivity of working from home: Evidence from Japan”(独立行政法人経済産業研究所):https://www.rieti.go.jp/en/columns/v01_0155.html; "Home-Based Workers and the COVID-19 Pandemic”(American Community Survey Reports):https://www.census.gov/library/publications/2023/acs/acs-52.html; "American Time Use Survey—ATUS 2003‐2021 Multi‐Year Microdata Files”(U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS):https://www.bls.gov/tus/data/datafiles-0321.htm; 日本のリモートワークを行う労働者の割合=雇用型就業者のうち現在の主な仕事でテレワークをしていると回答した人の割合; アメリカのリモートワークを行う労働者の割合=16歳以上の雇用型就業者で、現在「在宅勤務」と回答した人の割合

3. 「在宅勤務の割合、2年ぶり上昇 ハイブリッドワーク浸透 コラム」(日本経済新聞):https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC253W00V20C24A6000000/

4. 「トヨタ自動車の工場DXプロジェクト Power Platformと市民開発を武器に 自律的デジタル化によるカイゼンを加速」(クラウド Watch):https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/topic/special/1479280.html

5. 「ファミリーマートとTOUCH TO GOが資本業務提携 無人決済システムを活用した実用化店舗第1号店を 東京都千代田区に3月31日(水)オープン ~スピーディで快適なお買い物環境の実現と、店舗オペレーションの省力化を実現~」(FamilyMart):https://www.family.co.jp/company/news_releases/2021/20210309_02.html

6. 「視認性の高い“一覧表示”で、通関業務を効率化業務品質向上や均一化、属人性排除の効果も」(NEC):https://jpn.nec.com/logistics_service/tsuukan/case/nittsu/index.html


(執筆: Jelper Club 編集チーム)

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