OB訪問、つまり「卒業生訪問」とは、学生が自分の将来のキャリアに役立つ情報を得るために、業界で活躍している自分の大学の卒業生や元従業員に会って話を聞くことである。しかし近年では、インターネットを介した社会人訪問も一般化しており、「興味のある企業の社員に連絡を取って、自分の大学のOBに限らず訪問すること」をOB訪問と呼ぶことが一般的である。この慣習は、特に日本の就職活動で非常に一般的であるが、世界の他の地域ではあまり見られない。そのため、日本の就職システムに慣れていない海外大学の学生にとって馴染みの概念の為、戸惑うこともあるだろう。本記事では、OB訪問とは何か、そしてなぜそれが学生のキャリア探求にとって有益であるのかを、日本の就職プロセスの文脈で解説する。OB訪問は、企業の内部情報や業界の実態を知るための貴重な手段である。ウェブサイトや求人広告では得られない生の情報を直接聞くことができるため、自分に合った職場かどうかを見極めるのに役立つ。本ガイドでは、OB訪問の目的とプロセスを説明し、OB訪問の実施に向けたTipsを提供する。ぜひこのガイドを参考にOB訪問を行い、企業研究を進めて欲しい。
1. OB訪問の概要とそのメリット
1.1 OB訪問の概要
前述の通り、OB訪問とは、就職活動中の学生が、自分が志望する企業で働いている先輩社員(OB・OG)に直接会い、仕事や業界の実情、就職活動の経験などを聞く機会を指すものである。日本特有の文化として知られる一方、欧米の感覚では「コーヒーチャット」に近い形式と捉えられることが多い。コーヒーチャットとは、カジュアルな雰囲気で社員と話し、企業文化やキャリアについて率直な意見を聞く場のことであり、OB訪問もそれと似た要素を持つ。近年では、オンラインツールを活用したOB訪問も広がり、多くの企業が公式に受け入れている。学生と社員がカフェや企業の食堂で会う伝統的な形に加え、ZoomやTeamsなどを使ったオンライン面談も増えてきた。このような場を通じて、企業側は自社の魅力や働き方を伝え、学生側はより深く企業を理解し、自身のキャリア選択に役立てることを目的としている。
OB訪問は、日本の就職活動において非常に重要な役割を果たす。特に日系企業においては、OB訪問がほぼ必須とされるほどである。以下にOB訪問の主要な利点を記述する。
1.2 必須とされる理由
1.2.1 リアルな職場の情報を得られる
特に内部情報が外部に出ることが少ない日系企業では、ウェブサイトや公式の求人情報だけでは分からない職場の実態を知る唯一の手段がOB訪問である。訪問を通じて、職場の雰囲気、社員間のコミュニケーションの様子、実際の業務内容、キャリアアップの機会など、具体的かつ詳細な情報を直接聞き出すことができる。これにより、自分が目指す業界や企業の実態など、業界特有の課題を理解するのにも役立つ。1対1の設定だからこそ、普段は話せない内容や、個人的に気になることなど、何でも聞けるのがOB訪問の大きな利点である。説明会やパンフレットから浮かんだ疑問を払拭し、さらなる理解を深めるために次の訪問で新たな疑問をぶつけることができるだろう。
1.2.2 ネットワーキングの機会
OB訪問は、業界内で直接的な人脈を築く絶好のチャンスである。特に日系企業においては、中堅以上の社員の推薦が内定に大きく影響することが多い。OB訪問を通じて良好な関係を築ければ、推薦や後の選考へ直接つながることもある。訪問した社員に良い印象を与えることができれば、彼らは自身の経験を共有することに喜びを感じ、訪問者を選考の練習相手として迎え入れたり、さらなる人脈(社員)を紹介してくれるだろう。
1.2.3 就職活動の準備と自己分析の深化
OB訪問は、自身のキャリアプランと業界の要求とを照らし合わせ、具体的なフィードバックを受けることで自己分析を深める絶好の機会である。このプロセスは、自分のスキルや経験が市場にどのように受け入れられるかを評価するだけでなく、自己の強みや弱点を理解し、自己改善の方向性を見定めるのにも役立つ。また、OB訪問は選考の練習にもなる。OB訪問は基本的に1対1の会話形式で行われるため、一方的に社員に質問するのではなく、自己アピールも適度に織り交ぜるべきである。社員は自己PRに対して、具体的な質問を通じて反応を探る。この対話は実際の選考面接を模しており、社員からのフィードバックをメモに記録することで、実際の面接の良い準備となる。
1.2.4 志望度の証明としてのOB訪問の回数
日系企業においては、OB訪問の回数が志望度の高さを示す指標となり得る。企業は、就職活動を通じて多くの候補者を評価するが、OB訪問を繰り返し行うことによって示される熱意は、他の候補者との差別化要因となる。さらに、複数回にわたる訪問を通じて異なる社員から話を聞く機会を得ることで、志望動機の説得性を高めることができる。このように、OB訪問の回数は、企業への志望度を示す上での重要な証拠の一つとなる。
以上のように、OB訪問は日本の就職活動において重要な要素であり、その準備と実施には適切な方法が求められる。
2. OBの見つけ方
OB訪問は、実際の職場の情報を得るために重要な手段である。以下の5つの主流な方法でOBを見つけることが可能である:
2.1 大学のキャリアセンター
日本の大学の学生であれば、多くの卒業生の連絡先や進路情報が集められている大学のキャリアセンターを最初に利用することが推奨される。
2.2 OB訪問用アプリやサイト
ビズリーチ・キャンパスなどのツールは、様々な条件で社会人を検索し、興味のある社員に接触を試みることが可能である。しかし、ビズリーチ・キャンパスでは、限られた地域以外からのOB訪問アクセスをポリシーにより許可していないため、海外の大学生には不利な条件となっている。一方、Jelper Clubでは、どの国の学生であっても、興味のある企業の社員とのOB訪問が可能である。Jelper Clubには、幅広い業界で働く社会人会員が所属しており、彼らにコンタクトを取ってOB訪問を行うことができる。これらのツールを用いることで、例え繋がりがなかったとしても、効率的に興味のある企業のOBを探すことができる。
2.3 知人や内定者の先輩の紹介
大学の先輩や友人の知り合いなど、個人的な繋がりから紹介を受ける方法も一般的である。具体的に興味がある会社や業界を示し、紹介を依頼することが有効である。
2.4 一度OB訪問をした社員による紹介
一度訪問した社員に別の社員を紹介してもらう方法である。これは日系企業の就活に特に有効であり、継続的なネットワーキングを可能にする。
2.5 ネットワーキングイベントへの参加
志望する業界の社員と交流することができる対面イベントへの参加も、一つの手段である。Jelper Clubでは、「Soirée Tokyo」などの社会人会員との交流の場を提供している。
3. OB訪問のプロセス
OB訪問は、企業研究の機会であるだけでなく、訪問される社員から評価される場となる。OB訪問を最大限に活用し、同時に訪問社員から高評価を得るためには、以下のように詳細な準備が必要である。
3.1 訪問前のリサーチ
訪問前のリサーチは、OB訪問の成功に不可欠である。企業の基本情報、業界の最新動向、競争状況、そして企業が直面している課題について理解することが求められる。さらに、訪問するOBの背景を調査し、その人のキャリア経歴や成果を知ることで、対話時に共感を示すポイントを見つけることができる。この準備は、相手への敬意を示すとともに、具体的かつ有意義な質問をするための基盤を作る。
3.2 訪問のアポイントメントの取り方
アポイントメントは、ファーストインプレッションを形成する重要な機会である。自己紹介と訪問の目的を明確に伝え、相手の都合を考慮して複数の訪問希望日時を提案することが重要である。時間の確保が難しい場合は、柔軟に対応できる意向を示すべきである。アポイントメントが決定した後、訪問日の数日前には確認の連絡を入れ、その際に当日聞きたい質問リストを添付して送ることで、予定の再確認と礼儀を示す行為となる。
3.3 訪問時の服装や持ち物
訪問時の服装は、企業の業界や社風に合わせて選ぶべきである。一般的にはスーツが適切である。第一印象は非常に重要であるため、清潔感があり、整った服装を心がけることが大切である。持ち物としては、筆記用具とメモ帳は必須であり、事前に準備した質問リストを持参することで、訪問中の対話をスムーズに進めることができる。
4. 訪問時のマナーとコミュニケーションのコツ
OB訪問の際、効果的なコミュニケーションと適切なマナーを実践することは、単に情報を収集する以上の価値をもたらす。以下のポイントを念入りに実行することで、訪問はより有意義で印象的なものになり、その後の選考にもポジティブな形で繋がる。
4.1 質問の事前準備
質問は訪問の核となる部分であり、事前に綿密に準備することが求められる。質問内容をリサーチに基づき作成し整理しておくことは、対話をリードする上での重要なステップである。特に、ネットで簡単に調べられる情報を避け、相手の実体験や具体的な視点を引き出せる質問を用意することが肝要である。訪問の目的を明確にし、相手の貴重な時間を有効活用することができる。
また、OB訪問を単なる情報収集の場にとどめるのではなく、自分自身の仮説をぶつけ、仮説検証の場として活用することも重要である。例えば、志望動機に直結するような企業の特徴に関する仮説を立て、仮説に対しての訪問社員の意見を求めることで、深い洞察や経験に基づいたフィードバックを得ることができる。自身の仮説に対し社員から賛同を得ることができた場合、当仮説を選考で話すことで志望動機に説得力を持たせることも可能となる。
具体的な情報を求める質問を通じて、相手の深い洞察や経験に触れることは、自身の就活の軸を検討するための貴重な機会にもなる。こうした事前準備と質問内容の工夫が、OB訪問をより有意義なものとする鍵である。
4.2 相手に敬意を表す態度
訪問中の行動一つ一つが、相手に対する敬意をどのように扱っているかを示すため、礼儀正しい態度は非常に重要である。挨拶はしっかりと行い、訪問中は相手の話を途中で遮ることなく聞き、質問や意見を述べる際にも相手を尊重する姿勢を忘れないようにする。これは専門的な環境だけでなく、一般的なビジネスシーンでも求められる基本的なコミュニケーションスキルである。また会話中には相手の名前を適宜使い、個人的なつながりを築く努力も大切である。
4.3 訪問後のフォローアップ
訪問後のフォローアップは、OB訪問相手の社員人との関係を長期的に維持するための鍵となる。訪問が終わった後は、できるだけ早く感謝の意を表すメッセージを送る。当メッセージには、訪問で学んだ点や印象に残った話、さらに聞きそびれた疑問等があればそれも盛り込む。この一手間が相手に良い印象を残すことに繋がる。
これらのマナーとコミュニケーションのポイントを心がけることで、OB訪問はただの情報収集の場を超え、実りある人間関係の構築とキャリアの発展へとつながる貴重な機会となる。
5. まとめ
OB訪問は、日本における就職活動のプロセスにおいて不可欠な位置を占めるものであり、単なる情報収集を超えた多くの影響を及ぼす要素である。日本での就職活動を検討している海外大学の学生にとって、OB訪問は成功への道を切り開くための有力な手段となり得る。そこで是非Jelper Clubのネットワークを活用し、志望企業や業界に勤める会員へのOB訪問を行うことで、志望企業への理解を深めていただきたい。このガイドが、OB訪問の準備と実施を通じて、日本での就職活動の助けとなることを願う。
Jelper Clubは今後も、多様な背景を持つ人々が日本でキャリアを築くためのサポートを強化していく予定である。日本の就職活動や日本でのキャリアに関する疑問があれば、積極的に「Thread」で発信していただきたい。
(執筆・編集:Jelper Club編集チーム)
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