コンサルティング業界への就職を考える新卒学生にとって、まずは業界の基礎知識を体系的に学び、ビジネス課題の解決や戦略策定に必要なスキルを磨くことが肝要である。本記事では、論理的思考、データ分析、コミュニケーション能力など、コンサルタントとして求められる多岐にわたるスキルを習得できる書籍を、実用書と理論書に分け、17冊を厳選して紹介する。これらの書籍は、初学者でも理解しやすく、実務に即した内容となっている。当17冊を、以下に記載の使い方ガイドに則って読んでいけば、戦略コンサルティングファームのみならず、すべてのコンサルティングファームからオファーを貰える確率がぐっと上がる。ぜひ確認してもらいたい。
実用書(基礎編)
・東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート
著者: 東大ケーススタディ研究会
出版社: 東洋経済新報社
概要: 東京大学の学生が実際に利用しているケース問題やフェルミ推定のフレームワークを、具体的なケーススタディを通して解説している。問題解決のプロセスを体系的に学ぶことができ、特に論理的思考能力を養い、ケース問題およびフェルミ推定の形式に慣れるのに適した内容となっている。
面接やビジネスケースでの問題解決能力が試される状況で、具体的な問題を効率的に解く手法を身につけることができるため、特にコンサルティング業界の面接対策に有効である。
使い方:後述の「ロジカルシンキング」と並んで、コンサルティング業界への就職を考えた際に一番最初に読むべき本。ケース問題およびフェルミ推定の基礎が載っており、まずは当書籍を2周読んで例題を解くことを推奨する。
一方で、難易度としては非常に易しいので、2周したら後述の本に移ってほしい。
著者: 照屋 華子, 岡田 恵子
出版社: 東洋経済新報社
概要: 本書は、論理的な思考を鍛え、効果的にコミュニケーションを行うための実践的な手法を紹介するものである。MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)の原則や「So what? Why so?」という質問フレームワークを駆使して、情報を整理し、重要な点を際立たせるスキルを習得することができる。
コンサルタントにとって、情報を整理し、的確に伝達する能力は不可欠である。本書で学べるMECEの原則は、情報を排他的かつ網羅的に整理する手法であり、面接時やプロジェクト提案の場で高い評価を受けるであろう。また、「So what? Why so?」という問いかけを用いることで、提案の根拠とその重要性を明確にし、クライアントや面接官に効果的に価値を伝えることが可能となる。
使い方:先述の「東大生が書いた 問題を解く力を鍛える」シリーズ同様、ケース面接およびコンサルタントになる上での基礎的素養を身につけられる本。最低でも2周は読んでほしい。
著者: バーバラ・ミント
出版社: ダイヤモンド社
概要: コミュニケーションとドキュメント作成において非常に効果的なピラミッド原則を詳細に説明している。本書を読むことで、読者は明確で説得力のある書き方と思考法を学ぶことができ、ビジネスシーンでのプレゼンテーションやレポート作成に役立つだろう。
ピラミッド原則は、情報を構造化し、相手に説得力ある形で伝える上で重要な理論であるため、コンサルティングの面接やプレゼンテーション、さらには日常の業務でのコミュニケーションにおいても非常に有用である。
使い方:面接における伝え方のエッセンスが書かれているため、できればケース面接に取り掛かる前に最低2周は読み込んでほしい。社会人としての基礎スキルである「考える・書く」ということを体系的に学べる良書であり、コンサルティング業界以外の面接やエントリシートの記載においても非常に役立ってくるだろう。
著者: マーク・コゼンティーノ
出版社: ダイヤモンド社
概要: 本書は、コンサルティング業界の採用試験に特化した対策本であり、特にケースインタビューに焦点を当てている。具体的なケーススタディや模擬面接の例を豊富に紹介しているため、読者は実践的なテクニックを学ぶことができる。また、戦略コンサルティングファームがどのような人材を求めているか、面接の傾向と対策についても詳細に解説されている。
コンサルティングファームの面接試験では、特に「ケースインタビュー」が選考プロセスの中心的な位置を占めている。このケースインタビューでは、応募者が未知のビジネス課題に直面した際、どのようにしてその問題を特定し、分析し、最終的な解決策を提示できるかを問われるため、受験者には高度な論理的思考と問題解決能力が求められる。本書では、具体的なケーススタディや模擬面接が数多く紹介されており、それらを通じて問題の特定、論理的な構造化、データ分析、プレゼンテーション能力など重要なスキルを養うことができる。
使い方:実態のケース面接に即したような例題やインタビュー例が掲載されている。
中身もフレームワークを少し広げ、先述の「東大生が書いた 問題を解く力を鍛える」シリーズより難易度を少し上げたものが多い。そのため、「東大生が書いた 問題を解く力を鍛える」と「ロジカルシンキング」を読む&例題を解く、このサイクルを2周ほどして基礎固めをした後は、ひたすら当書の例題を解くのを推奨する。最低でも3周はしたい。
著者: マーク・コゼンティーノ
出版社: Burgee Press
概要: 本書は、ケースインタビュー対策に特化した書籍である。著者のマーク・コゼンティーノは、ハーバード大学のキャリアアドバイザーとして豊富な指導経験を持ち、実際の面接に役立つアプローチを詳細に解説している。ケーススタディの種類も多岐にわたり、マーケットサイズ推定、コスト削減、新規事業立ち上げなど、ビジネスの様々な課題に対応している。フェルミ推定やデータ分析の基礎も含まれており、問題解決スキルを体系的に学ぶことができる内容となっている。
使い方:実態のケース面接に即したような例題やインタビュー例が掲載されている。
先述の「東大生が書いた 問題を解く力を鍛える」と「ロジカルシンキング」で基礎固めをした後に、ひたすら当書の例題を解くのを推奨する。模擬面接形式での練習を取り入れることで、対話的な問題解決能力を向上させることができる。
著者: 石野 雄一
出版社: 光文社
概要: 財務の基本から応用までを簡潔に解説し、経営者やコンサルタントが持つべき財務知識を提供する一冊である。経済全般に対する理解を深め、意思決定をサポートする知識を網羅している。
財務知識は、コンサルティングの案件で頻繁に必要とされるスキルである。本書で学べる知識は、ビジネスモデル分析、投資案件の評価、リスク管理など、多岐にわたるプロジェクトで活用可能であり、面接においてもそのスキルを証明する助けとなるだろう。
使い方:当書籍は、可能であればケース面接の練習にしっかり読んでほしい。財務に関する知識なしにビジネスは語れないからである。最低でも2周読み、財務に関する基本的知識をしっかり身につけてほしい。
実用書(応用編)
著者: 内田 和成
出版社: 東洋経済新報社
概要: 本書では、問題解決に迅速かつ効果的に取り組むためのBCG(ボストン コンサルティング グループ)流の仮説駆動型アプローチが紹介されている。仮説を立て、それを検証しながら問題の本質に迫る手法が具体的に解説されている。
コンサルティングの面接では、ビジネスケースに対して効率的にアプローチし、論理的に仮説を立て解決策を導くスキルが重視される。本書で学ぶ仮説思考は、そのような場面で特に有効であり、面接の成功に繋げるために役立つ。また、実務においても、迅速かつ正確な問題解決アプローチは、プロジェクト遂行の効率を高めるうえで不可欠なものである。
著者: 内田 和成
出版社: 東洋経済新報社
概要: 本書では、問題解決において最も重要なステップである「問題設定」に焦点を当て、BCG流の論点思考アプローチが紹介されている。適切な問題を設定し、論点を明確にすることで、解決策を効率的に導き出すための手法が具体的に解説されている。
コンサルティングの面接では、問題自体を正確に設定し、その解決に向けた論点を特定する能力が求められる。本書で学ぶ論点思考は、複雑な問題に対しても適切にアプローチし、クライアントのニーズに応じた解決策を導くスキルを養うために有効である。また、実務においても、問題設定の質がプロジェクトの成否を左右するため、論点思考は不可欠な技術となる。
著者: 安宅 和人
出版社: 英治出版
概要: 本書は、問題解決のプロセスにおいて「イシュー」を明確に定義し、解決すべき本質的な課題に焦点を当てることの重要性を説いている。著者は、膨大な情報に惑わされることなく、最も価値のある問いを見極め、その解をシンプルに導き出すための思考法を提供している。
コンサルティングの世界では、膨大な情報を整理し、クライアントが直面する本質的な課題を特定する能力が必要不可欠である。本書で学べる「イシュー思考」は、問題の核心に迫るためのフレームワークとして、コンサルタントがプロジェクトを成功に導くために役立つ。また、面接においても、論理的かつ焦点を絞った思考プロセスを示すことで、問題解決能力を効果的にアピールできるだろう。
使い方:基礎編の「東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート」シリーズおよび「ロジカルシンキング」を読破したら、「戦略コンサルティング・ファームの面接試験 新版 難関突破のための傾向と対策」と並行して読むのをおススメする。
実務においては、論点を定めたのち、その論点に対する仮説を立てていくのが定石であるが、読む順序としてはその逆を推奨する。すなわち、まず仮説思考を読み、仮説思考を基に課題を解決するとは何か、具体的には問題解決を素早く行うということの定義と、立てる仮説のあるべき粒度感について理解してから論点思考を読み、本質的な問いを立てる事の意義を理解するべきである。そして最後に「イシューからはじめよ」を読むことで、理解した知識を具体的にどのように実務に活かすかといったことを理解し会得することができる。
著者: 田中 慎一, 保田 隆明
出版社: ダイヤモンド社
概要: 企業の資本構成やリスク管理、資金調達に関する理論と実践的な手法を網羅した教科書である。コーポレートファイナンスにおける基礎的な概念から、現代の企業が直面する複雑な財務戦略まで、幅広く解説されている。実務において役立つ事例を通じて、理論と実践をわかりやすく結ぶ内容となっている。
コンサルティングの面接や実務において、財務戦略を論理的に立案し、企業価値を向上させるための洞察を提供するスキルが重視される。本書で学ぶコーポレートファイナンスの知識は、企業経営や投資銀行業務、さらにはスタートアップの資金調達戦略においても有効であり、プロフェッショナルとしてのスキル向上に繋がる。また、企業の持続的成長を実現するためのファイナンス戦略を構築するための基盤としても活用される。
使い方: 財務関連の知識を習得する上で、これとなく有用な本。先述の「ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務」を読み込んだ後は、当書を読み込むと、ビジネスレベルで使える財務知識が身につく。ボリュームはあるが、2周は読みたい。
理論書
以下に記載する本は、経営に関する理論が展開されている、古典とも呼ぶべき本である。コンサルタントとして理解しておくべき基礎的な本であるが、学生のうちからこうした本を読み込んでおくことで、面接では勿論、インターンシップにおいて知識面や思考面でパフォームできるようになる。そのため、本気でコンサルティングファームからオファーを貰いたい学生は是非読み込んでほしい。
著者: ジェイ・B・バーニー
出版社: ダイヤモンド社
概要: 本書は、企業の競争優位を理論的に理解するためのフレームワークを提供する一冊である。資源ベース理論(RBV)を基盤に、企業が保有する資源や能力を「価値(Value)」「希少性(Rarity)」「模倣困難性(Imitability)」「組織(Organization)」の観点から評価する「VRIOフレームワーク」が詳述されている。企業内部の資源がどのように競争優位を生み、持続的な強みとなるかを理解するための重要な指針を示している。
本書で学べる理論は、企業が外部環境への適応だけでなく、内部資源の戦略的活用を通じて競争優位を構築し、維持するための方法を深く理解することを可能にする。また、経営戦略における動的な要素にも触れ、長期的に企業が成功するための洞察を提供する。
コンサルティング業務においても、企業の競争優位を評価・強化するための分析や提案が必要であり、VRIOフレームワークはその際に有用なツールとなり得る。クライアントの保有資源が持つ価値や模倣困難性を評価し、持続的な競争優位を築くための実践的なアドバイスを提供することができるため、コンサルタントにとって重要な理論的基盤となる。
著者: 大前 研一
出版社: プレジデント社
概要: 実務経験に基づき、戦略的思考のエッセンスが具体的に解説された書籍である。戦略の立案から実行に至るまでのプロセスが描かれ、実際のビジネスシーンにおけるリアルなエピソードが盛り込まれている。
本書で得られる具体的な戦略立案・実行の理論は、コンサルティングの現場で直面する複雑な課題に対して深い洞察を提供する。面接時にも、これらの具体的なアプローチを説明することで、コンサルタントとしての実践的なスキルをアピールできるだろう。
著者: マイケル・ポーター
出版社: ダイヤモンド社
概要: 本書は、経営戦略の分野における古典的な名著であり、企業が市場で優位性を確保するための基本的なフレームワークを提供している。ポーターは、企業が競争に打ち勝つために取るべき三つの基本戦略(コストリーダーシップ、差別化、集中)を提唱しており、これらは今日のビジネスシーンでも依然として有効である。さらに、業界の競争構造を分析するための「ファイブフォース分析」も紹介され、企業が業界内外の要因に基づいて戦略を練るための強力なツールを提供している。
ポーターの競争戦略論は、コンサルティング業務においても重要な理論であり、クライアント企業が市場でのポジションを強化し、持続的な成長を達成するための指針となる。学生にとっても、こうした理論的枠組みを理解しておくことで、インターンシップや面接時に優れた戦略的洞察力を発揮できるだろう。
著者: ハーマン・サイモン
出版社: ダイヤモンド社
概要: 本書は、価格設定の理論と実務を体系的に学べる一冊である。価格は企業の利益に直結する最も重要な要素であり、本書では「プライシングの天才」と称される著者が、価格戦略の構築とその実行方法を詳述している。企業が市場で競争優位を確保するための価格設定手法や、顧客の価値認識に基づくプライシング戦略の重要性を理解できる。また、行動経済学の観点から消費者の行動や心理を分析し、より適切な価格戦略を立案するための実践的なアプローチも紹介されている。
コンサルタントにとって、クライアント企業の価格戦略を見直し、最適化することは業務の一環であり、この書籍はその基盤となる知識を提供している。インターンや面接においても、価格設定の知識を示すことで、企業利益に対する深い理解をアピールできるであろう。
著者: ピーター・ドラッカー
出版社: Harperbusiness
概要: 経営学の基礎となる理論を網羅的にカバーしている名著であり、現代の経営理論に多大な影響を与えている。本書では、経営者が果たすべき役割や、組織がいかにして成功するかについて理論的に説明し、組織の目標達成に向けたマネジメントのアプローチを詳細に述べている。ドラッカーの理論は、経営資源の最適な活用、意思決定プロセス、リーダーシップ、組織文化の形成など、今日のビジネス環境においても不可欠な視点を提供している。
学生のうちにドラッカーのマネジメント理論を理解しておくことで、企業の意思決定プロセスや組織運営に対する洞察を深め、コンサルタントとしての実務においても重要な理論的基盤を持つことができる。
著者: フィリップ・コトラー、ケビン・レイン・ケラー
出版社: 丸善出版
概要: 本書は、マーケティング分野における基本理論を網羅した書籍であり、特に経営コンサルタントが知っておくべきマーケティングのフレームワークを提供している。フィリップ・コトラーとケビン・レイン・ケラーは、マーケティング戦略の立案、消費者行動の分析、ブランドマネジメント、価格戦略、プロモーション戦略など、現代のマーケティングにおける重要な要素を理論的に解説している。マーケティングの理論を理解することで、クライアント企業の市場シェア拡大やブランド価値向上に寄与する戦略的提案が可能となる。
特に、コンサルタントとして、マーケティング戦略を企業全体の成長戦略に組み込むスキルは非常に重要である。インターンシップや面接時でも本書の知識を活かすことで、高い評価を得ることができるだろう。
次のステップ
読書後に試してみるべきこと
本項で紹介した書籍を読んだ後は、実際のビジネスケースを自分や友人、またはJelper上でコンサル就職を目指す人や既に就職した人と共に練習・シミュレーションすることを強くお勧めする。これにより、書籍から得た理論を深く理解し、実践力を養うことができる。また、インターンシップに参加し、実際のプロジェクトに携わることで、さらなる実践経験を積むことができるだろう。
コンサルティング業界に飛び込む前に持っておくべき心構え
コンサルタントとして成功するためには、常に学び続け、柔軟な対応力を持つことが求められる。読書を通じて得た知識を武器にして、業界に飛び込む準備を整えることを推奨する。
まとめ
コンサルティング業界は、企業の成長を促進し、ビジネスイノベーションをリードする機会を提供する分野である。この業界でのキャリアは、論理的思考、データ分析、問題解決能力、そしてクライアントとの効果的なコミュニケーションを含む多様な高度なスキルを要求される。本記事で紹介した17冊の書籍は、これらのスキルを段階的に習得するために、貴重な知見を提供している。これらの書籍を用いて、業界の基本からしっかりと学び、その後応用力を高めることで、コンサルティングファームの面接を突破するのみならず、コンサルタントとしての自信と実力を確実に身につけることが可能である。
読了後は、習得した知識や考えたことを「Feed」にて積極的に共有することで、理解をより深められる。さらに、他のJelper Club会員との意見交流を通じて、自分一人では得ることのできない気づきに触れられるだろう。また、多数の現役コンサルタントが会員として登録しているJelper Clubでは、彼らからのフィードバックを得ることも可能である。
Jelper Clubでは今後もコンサルティング業界をはじめとする多様な業界での就職活動やキャリアに役立つ情報を積極的に提供していく予定である。興味のある業界やコンサル業界に関する疑問などがあれば、「Feed」での投稿を通じて質問することを強く推奨する。
(執筆・編集:Jelper Club編集チーム)
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