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【Jelper’s Column】アメリカで揺れる留学生政策と、日本の受け皿としての可能性

  • 執筆者の写真: Daichi Mitsuzawa
    Daichi Mitsuzawa
  • 4 日前
  • 読了時間: 5分

VISA

1. アメリカの大学に吹き始めた冷たい風


2025年5月22日、アメリカ国土安全保障省(DHS)は、ハーバード大学のSEVP(学生・交流訪問者プログラム)認可を取り消し、I-20(留学生のビザ発行に必要な書類)を新規発行する権限を停止しました。この決定により、6,800人を超える留学生が突然、在留資格を脅かされる事態に*1

翌日には、ハーバードが連邦裁判所に提訴し、判事が一時的差し止め命令(TRO)を出したことで、学生たちのビザは一時的に有効なまま維持されました*2

これと関連して、カリフォルニア州の連邦判事も、SEVIS登録の大量取り消しを移民当局が強制執行することを差し止める判断を下しました。

この判断は、「個別の審査が欠如しており、適正手続きの保障に違反する恐れがある」と指摘したもので、ハーバードに限らず複数の大学に在籍する何千人もの留学生を、一時的に資格剥奪から保護するものです*4

しかしDHSは、スタンフォード大学やコロンビア大学を含む他の研究機関も調査対象であると公言し、「1大学」から「大学セクター全体」への波及が明らかになっています

このビザ危機は、以下のような広範な規制強化と連動しています:


  • 2025年4月以降、ICE(移民税関捜査局)はSEVIS登録を4,700件以上削除し、OPT(実務研修)中の学生に15日以内の退去通告を発行*4

  • 労働省は、H-1Bビザの最低賃金基準を30〜50%引き上げる案を提示し、雇用主側の負担を増加*5

  • ホワイトハウスは、全輸入品に10%の関税(日本製品は24%まで引き上げの可能性)を導入し、貿易摩擦が再燃*6


これらの動きを総合すれば、アメリカが「費用高・不安定」な留学・就職先に変化していることは明白です。



2. 学生に直撃したビザの衝撃


海外留学を控えている私たち、あるいはすでに現地にいる学生にとって、今回の変化は他人事ではありません。

  • 在留資格の不安定化:SEVISの更新を1回ミスしただけでも、滞在資格が取り消される可能性が。今回のハーバード事件は、「ブランド」では守れない現実を突きつけました。

  • 就職チャンスの狭小化:賃金基準の引き上げによって、新卒の外国人採用は後回しまたは海外移転される傾向が強まっています。

  • 大学の財政逼迫:留学生の授業料は大学の重要な収入源。ハーバードでは全体の27%が留学生。この収入が消えれば、RAポジション、選択科目、国内学生向け奨学金にも影響が出ます。

  • 貿易摩擦の波及:アメリカの対中・対日関税により、日本の製造業者の信頼感は低下。国内回帰の流れが一気に進む可能性があります*3*8



3. 静かに開き始めた「日本」という選択肢


一方で、アメリカの政策が揺れる中、日本では新たな機会が生まれつつあります。

  • 政府の動き:経産省(METI)は、関税対応の特別タスクフォースを設置し、研究開発の国内回帰に補助金を準備中と発表しました*9

  • 企業の採用強化:自動車ソフトウェアやプライベートエクイティなど、アメリカリスクに備える形で国内技術チームを増員している企業が続出中です*10

  • 安定という魅力:日本にはSEVISもH-1Bもありません。必要なのは雇用契約書とSuicaだけ。日本の労働市場が今、グローバル志向の若者にとって「消極的な逃げ場」ではなく、「積極的な選択肢」になりつつあります。



4. だからこそ、進路はひとつに絞らないで


この原稿を書いている私も、学生としてビザの書類作成、Zoom面接を同時に抱えています。そして痛感しました——「ビザ1つ」に将来すべてを託すのは危険すぎる

進路の選択肢を広げることは、ただのリスク分散ではありません:


  1. メンタルの安定:「他にも道がある」と思えれば、どんな政策ニュースもパニックにはなりません。

  2. 交渉力アップ:日本、カナダ、オーストラリアといった選択肢があれば、企業側も真剣に耳を傾けてくれるようになります。

  3. しなやかなキャリア形成:国を跨ぐキャリアは、広いネットワークと実践的なスキルを運んできてくれます。


JLPTやAWSなどの資格を取り、Jelper Clubを通して日本企業でインターンする——そうした1つ1つの行動が、アメリカの政策がどう転んでも確かな武器になっていきます。



5. 学生から伝えたいエール


地震は景色を変えます。ビザ政策の地震は、確かにいくつかの扉を閉じたかもしれません。でも同時に、日本という国で、新たな扉が開かれ始めているのも事実です。

高齢化と人材不足、そして貿易リスク。これらの課題を背景に、日本企業はグローバル視点を持つ学生を今、本気で求めています

だからこそ、すべてのI-20をバックアップし、LinkedInのプロフィールはバイリンガルにした上で、Jelper Clubに登録すること。そして何より——どこで働くかを「選べる」自分でいること。それが、この時代を生き抜く一番の武器になるはずです。




出典


  1. 「ハーバード大学、留学生プログラム認定を喪失」(アメリカ国土安全保障省):https://www.dhs.gov/news/2025/05/22/harvard-university-loses-student-and-exchange-visitor-program-certification-pro

  2. 「ハーバード大学、留学生・研究者の受け入れ禁止措置をめぐり政府を提訴」(Harvard Gazette):https://news.harvard.edu/gazette/story/2025/05/university-sues-administration-over-move-to-bar-international-students-scholars

  3. 「ハーバード大学:留学生のビザに不安広がる」(The Guardian):https://www.theguardian.com/us-news/live/2025/may/23/harvard-university-international-students-donald-trump-republicans-democrats-us-politics-latest-news

  4. 「グローバル人材に新たなリスク:F-1ビザのSEVIS終了と学生ビザの取り消し」(BIG Immigration Law Blog):https://www.bigimmigrationlawblog.com/2025/04/the-new-risk-for-global-talent-f-1-sevis-terminations-and-student-visa-revocations

  5. 「外国人労働者の賃金データセンター」(アメリカ労働省):https://www.dol.gov/agencies/eta/foreign-labor/wages

  6. 「トランプ大統領、国家競争力強化に向け国家非常事態を宣言」(ホワイトハウス):https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/04/fact-sheet-president-donald-j-trump-declares-national-emergency-to-increase-our-competitive-edge-protect-our-sovereignty-and-strengthen-our-national-and-economic-security

  7. 「日本政府、米国関税の影響を受け経済見通しを下方修正」(ロイター通信):https://www.reuters.com/business/japan-downgrades-view-global-economy-us-tariffs-bite-2025-05-22

  8. 「日本の製造業者、トランプ政権の関税措置で景況感悪化」(ロイター通信):https://www.reuters.com/business/finance/japanese-manufacturers-less-confident-due-trump-tariff-action-2025-05-20

  9. 「経済産業省、関税政策対応タスクフォースを設置」(経済産業省):https://www.meti.go.jp/english/press/2025/0403_001.html

  10. 「カーライル・ジャパン、世界的人材シフトを受け採用強化」(ジャパンタイムズ):https://www.japantimes.co.jp/business/2025/05/19/companies/carlyle-japan-hiring-spree


 
 
 

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