近年、世界中の国が争奪戦を繰り広げている世界トップ大学の卒業生。英国が、主要な世界大学ランキング3つのうち、2つ以上で50位以内にランクインしている大学を5年以内に卒業した外国籍の者に対し、2年間(博士号の場合は3年間)のビザを発給するという、ハイポテンシャル・インディビジュアル・ビザ・プログラムを2022年5月に開始したのは記憶に新しい1。 そういったトレンドの中、従来より外国人の受け入れに慎重だった日本も政策を大きく転換し始めている。本記事では、そのような世界トップ大学の卒業生の受け入れに関する日本の制度についてを記載していく。
※本記事はあくまでパブリックデータから引用した情報を基に執筆した記事であり、本記事から派生した事象に対し、弊社は一切の法的責任を負いかねます。法的な観点等については、法律事務所や行政書士事務所にお問い合わせください。
世界トップ大学の卒業生に対し在留資格を付与する制度「J-Find」とは?
J-Find(未来創造人材制度)とは、優秀な海外大学等を卒業等した方が、日本において「就職活動」または「起業準備活動」を行う場合、在留資格「特定活動」(未来創造人材)を付与され、最長2年間(1年または6カ月ごとに更新が必要)の在留が可能となる制度である。なお、以下の要件(a~c)を全て満たした卒業生が、当制度の対象となる*2。
a. 対象大学:
令和5年9月時点の対象大学は以下の通り。
United States(アメリカ)
Boston University
Brown University
California Institute of Technology
Carnegie Mellon University
Columbia University
Cornell University
Duke University
Georgia Institute of Technology
Harvard University
Johns Hopkins University
Massachusetts Institute of Technology (MIT)
New York University
Northwestern University
Princeton University
Purdue University - West Lafayette
Stanford University
The University of Texas at Austin
University of California, Berkeley
University of California, Irvine
University of California, Los Angeles
University of California, San Diego
University of California, Santa Barbara
University of Chicago
University of Illinois at Urbana-Champaign
University of Michigan-Ann Arbor
University of Minnesota, Twin Cities
University of North Carolina at Chapel Hill
University of Pennsylvania
University of Southern California
University of Washington
University of Wisconsin - Madison
Vanderbilt University
Washington University in St. Louis
Yale University
United Kingdom(イギリス)
Imperial College London
King's College London
London School of Economics and Political Science
The University of Edinburgh
The University of Glasgow
The University of Manchester
The University of Oxford
University College London (UCL)
University of Bristol
University of Cambridge
University of Southampton
Canada(カナダ)
McGill University
University of British Columbia
University of Toronto
China・Hong Kong(中国・香港)
City University of Hong Kong
Fudan University
Nanjing University
Peking University
Shanghai Jiao Tong University
The Chinese University of Hong Kong
The Hong Kong Polytechnic University
Tsinghua University
University of Science and Technology of China
Zhejiang University
The Hong Kong University of Science and Technology (HKUST)
The University of Hong Kong
Australia(オーストラリア)
The Australian National University
The University of Melbourne
The University of New South Wales
The University of Queensland
The University of Sydney
Monash University
Germany(ドイツ)
Heidelberg University
Technical University of Munich
University of Bonn
LMU München
Netherlands
Delft University of Technology
Erasmus University Rotterdam
University of Amsterdam
University of Groningen
Belgium
KU Leuven
Singapore
National University of Singapore
Nanyang Technological University
France
Institut Polytechnique de Paris
Paris-Saclay University
PSL Research University Paris
Sorbonne University
Sweden
Karolinska Institute
KTH Royal Institute of Technology
Switzerland
ETH Zurich
EPFL
University of Zurich
Japan
Kyoto University
The University of Tokyo
South Korea
Korea Advanced Institute of Science and Technology
Seoul National University
Yonsei University
Russia
Lomonosov Moscow State University
上記対象大学の条件として、3つの世界大学ランキング(※i)中、2つ以上で100位以内にランクインしている大学(未来創造人材制度の対象となる大学一覧:https://www.moj.go.jp/isa/content/001394994.pdf)を卒業、又はその大学の大学院の課程を修了して学位又は専門職学位を授与されていること(※ii)が挙げられる。
※i:世界大学ランキング
(1)クアクアレリ・シモンズ社公表のQS・ワールド・ユニバーシテイ・ランキングス(https://www.topuniversities.com/university-rankings)
(2)タイムズ社公表のTHE ワールド・ユニバーシテイ・ランキングス(https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings)
(3)シャンハイ・ランキング・コンサルタンシー公表のアカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシテイズ
※ii:令和5年9月時点のランキングに基づき作成されているため、申請の際は、必ず最新の3つの世界ランキングも併せて確認すること。
b. 卒業等後の年数:上記の対象大学を卒業し、又は対象大学の大学院の課程を修了して、学位又は専門職学位(学位規則(昭和28年文部省令第9号)第5条の2に規定する専門職学位をいい、外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を授与された日から5年以内の方。
c. 生計維持費:滞在当初の生計維持費として、申請の時点において、申請人の預貯金の額が日本円に換算して20万円以上あること。
在留資格「特定活動」(未来創造人材)が付与されると、就職先がない状態でも日本に滞在し、就職活動や起業準備活動およびそれらの活動を行うために必要な資金を補うための就労を行うことが可能となる。また、扶養する配偶者・子にも、在留資格「特定活動」(未来創造人材の配偶者等)が付与され、帯同することが可能(配偶者・子の就労には、資格外活動許可が必要)である。
※バー、スナック、キャバレー等の風俗営業での就労は認めらない。
J-FIndを利用した在留資格「特定活動」の申請方法
在留資格「特定活動」申請のステップを以下に記載する。
①在留資格「短期滞在」を取得し来日
②J-Find制度を用いた在留資格認定証明書の申請・取得を日本国内で実施
在留資格「短期滞在」を取得し来日
各国の日本大使館および総領事館にて申請
申請に必要な書類は、各国によって異なるので、必ずaで示した機関に確認すること
以下のリンクに記載のある国は、申請なしに在留資格「短期滞在」の取得可能 https://www.mofa.go.jp/j_info/visit/visa/short/novisa.html
日本国内で、在留資格認定証明書の申請・取得
以下の書類を用意し、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署にて申請 (地方出入国在留管理官署のリストはこちら) ・在留資格認定証明書交付申請書 1通:申請書はこちらからダウンロード ・写真 1葉 (指定の規格を満たした写真を用意し、上記申請書に添付して提出) ※ 指定の規格を満たさない不適当な写真を用いて申請が行われた場合には、写真の撮り直しを命じられる可能性あり ※16歳未満の方は、写真の提出は不要。 ・返信用封筒 1通 (定形封筒に宛先を明記の上、404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) ・大学又は大学院を卒業(又は修了)し、学士以上の学位を取得していることを証する文書(大学又は大学院の卒業(又は修了)証書(写し)、或いは卒業(又は修了)証明書 1通 ・経歴書(PDF)(Word) ・滞在予定表(PDF)(Word) ・申請人名義の銀行等の預貯金口座の現在残高が分かる資料(預貯金通帳の写し等)
日本のマイナンバーカードを持っている場合は、オンラインでも申請可能。 申請リンク:https://www.ras-immi.moj.go.jp/WC01/WCAAS010/ ※オンライン申請を行う場合は、以下のリンク参照: https://www.moj.go.jp/isa/content/001396516.pdf
まとめ
現段階では活用例等がメディアで取り上げられる機会も少なく、存在感の薄い制度とも言えるだろう。しかし対象の世界トップ大学さえ卒業していれば、就職先が決まっていなくとも最大2年間まで日本に滞在できる当制度は、日本で働く前に日本の文化や日本語に慣れるという文脈でも非常に魅力的であろう。特にJelper Clubのメンバーのほとんどが、対象大学出身者であると思うが、是非当制度を用いて日本に来てみてほしい。そして、Jelper Clubを活用して、日本でのキャリア・生活を素晴らしいものにしてほしい。
(編集:Jelper Club編集チーム)
出典・注記
1. 「英国、大学ランキング上位校の卒業生向けビザルート導入」(JETRO):https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/05/c429b8f7eec67b82.html
2. 「優秀な海外大学等を卒業した者が起業活動・就職活動を行う場合(J-Find)」(出入国在留管理庁):https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities51.html
3. 「在留資格「特定活動」(未来創造人材/J-find)とは?(行政書士法人IMS):https://attorney-office.com/blog/3884_si
4. 「在留資格認定証明書交付申請」(出入国在留管理庁):https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-1.html#midashi05
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