優秀な海外大学等を卒業等した方が、日本において「就職活動」または「起業準備活動」を行う場合、在留資格「特定活動」(未来創造人材)を付与され、最長2年間(1年または6カ月ごとに更新が必要)の在留が可能となる制度であるJ-Find(未来創造人材制度)。2023年4月より導入されて以降、まだまだ認知度は低いが、日本での就労を目指す世界トップ学生が徐々に当制度に気づき、実際に使って日本で暮らしながら就職活動を行っている。当記事では、出入国在留管理庁が2024年7月5日に公表した在留外国人統計の、「特定活動」(未来創造人材)を適用している在留外国人数データを分析しながら、J-Find元年となった2023年のJ-Findの活用度合および今後の動向について考察していく。
J-Findの適用に関する現状
以下に、2023年12月末時点で特定活動「未来創造人材(本人)」を適用している在留外国人数および当数値を各国のJ-Find対象大学数で割った数値のグラフを記載する。
図1:2023年12月末時点で特定活動「未来創造人材(本人)」を適用している在留外国人数*1
(*2023年4月~12月のJ-Find適用数ではないことに留意)
図2:2023年12月末時点で各国のJ-Find対象1大学あたりの特定活動「未来創造人材(本人)」を適用している在留外国人数*2 (*分子はあくまで国籍ごとの数であり、正規留学生も当国籍としてカウントされていることから、当数値がトピックを示す上で正確なものではないことに留意)
考察
図1の通り、2023年12月末時点でのJ-Find適用在留外国人数は353であった。イギリス版J-FindであるイギリスのHigh Potential Individual Visaの初年度(2022年5月施行)発行数は1,342*3であり、この数字と比較すると日本の数値は見劣りする。勿論、353という数字は2023年4月~12月のJ-Find適用数合計ではないので一概に比較はできない。しかしUKのHigh Potential Individual Visaの発行数に対して少ないといった批判記事がイギリス国内から挙がっている*4ことを鑑みると、いずれにせよこのJ-Findの発行数に関しては「少ない」という評価が妥当であろう。
一方で、英国と大きく違う点は言語面の観点である。英国は公用語が英語であり、世界中から学生を集めやすいのに対し、日本は公用語が日本語であり、言語の違いに障壁を感じている学生が多いという点がある。また2023年は歴史的な円安トレンドが発生した年であり、ポンド建ての給与水準はかなり低くなった年であった。そうした言語・為替レートのハンディキャップがあるにも関わらず、J-Findを適用して日本に滞在し、就職先を探している学生が2023年12月末時点で353人もいるというのは、むしろ「世界トップ学生間における、就労先としての日本に対する注目度合のポテンシャルは高い」と言えるのではないか。
なお、国籍としては中国がJ-Find適用数全体の実に75%を占めている。またJ-Find適用大学数で当国籍別J-Find適用数を割った図2を見てみると、中国がダントツの1大学あたり22人であった。また他を見ると近隣国およびAPACの国における当人数が多いことが分かる。勿論あくまで国籍なので、他国の大学で学んだ正規留学生も含んでいることから、正しい考察を得ることは不可能であり、あくまで推測しかできない。しかし、米英やドイツなど、地理的に遠い、かつ2023年経済状況が比較的好調であった欧米諸国の数値の低さが際立っていることから、国内の経済状況や地理的条件がJ-Find適用数の説明変数であると考えられる。なお、各国における認知等のミクロの説明変数は考えられるものの、J-Findの初年度においてはミクロの説明変数の分散はそこまで大きくないことが予想されるため、当説明変数の影響は大きくないであろう。
J-Findの今後
J-Findの適用数は基本マクロ情勢や地理的要件に大きく左右されるものの、直近の円安トレンドの落ち着きや、近年日本語要件が低い新卒向けのポジションが日本で増えている(詳細はJelper Clubのホームページを参照)ことを踏まえると、今後J-Findの適用数は増えていく可能性は高いと考えられる。
ネガティブなステレオタイプが根強い日本での就労であるが、労働環境や賃金水準の是正に積極的な企業は近年急増しており(参照:https://info.jelper.co/post/2312-break-japan-overworking-myth-en)、J-Find適用後の選択肢も増えている。日本での就労に少しでも興味のある世界トップ学生は、是非J-Findを適用してまずは日本に来てみてほしい。海外で広がる日本へのステレオタイプと実態との乖離に、驚きを受けるであろう。
またJ-Findを適用し、就職先を探している方は是非Jelper Clubに登録して就職先を探してみてほしい。Jelper Clubには世界トップ学生を求めてJelper Club限定のポジションを出している企業が多く登録しているため、きっとぴったりの就職先が見つかるだろう。また、同じくJ-Findを適用している人も多く登録しているため、同志を見つけることも可能である。
(Jelper Clubのリンクはこちら:https://info.jelper.co/)
(執筆・編集:Jelper Club編集チーム)
出典・注釈
1. 「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」(出入国在留管理庁):https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250012&tstat=000001018034&cycle=1&year=20230&month=24101212&tclass1=000001060399&stat_infid=000040186953&result_back=1&tclass2val=0
2. 「未来創造人材制度の対象となる大学一覧」(出入国在留管理庁):https://www.moj.go.jp/isa/content/001394994.pdf
3. "Home Office publishes latest immigration statistics" (Laura Devince Immigration): https://www.lauradevine.com/news/home-office-publishes-latest-immigration-statistics/
4. "Why the High-Potential Individual visa route won’t attract the brightest and best to the UK" (Yash Dubal): https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1789650/why-high-potential-individual-visa-route-wont-attract-brightest-best-uk
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