1. Introduction
世界中のトップ学生に人気の経営コンサルティング業界。日本においても例外ではなく、さまざまな業界の多様な案件に関わることができるため、魅力的なファーストキャリアとして認識されている。
特に近年は日本企業の成長戦略やデジタルトランスフォーメーション(DX)、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する需要が増しており、コンサルティングファーム側もそうした状況に応じるために採用を活発にしている傾向にある。また、近年非常に需要が高いプロジェクト・マネジメント・オフィス(PMO)については特に多くの人手が必要であるため、その採用数が増加している。
本記事では、日本のコンサルティング業界の状況、求められるスキルセット、キャリアパス、就職活動の具体的なステップについて解説する。
2. 日本におけるコンサルティング業界の概要
2.1 業界の歴史と現状
コンサルティング業界の発展と歴史: 日本のコンサルティング業界は、戦後の経済復興期に基盤を築き、1980年代頃から急成長を遂げた。特に経営戦略コンサルティングは企業の成長戦略や競争戦略の策定において重要な役割を果たしてきた。
現在の市場規模: 2024年現在、日本のコンサルティング業界は多様化が進んでいる。市場規模も約2兆円に達し、今後数年間も年平均3.5%程度の成長が見込まれている*1。
2.2 主要なコンサルティングカテゴリーとファーム
以下に、主要なコンサルティングカテゴリーおよびカテゴリー別のコンサルティングファームをカテゴリ別に紹介する。
戦略コンサルティングファーム: 経営戦略や成長戦略の立案など、企業の方向性に対するコンサルティングを行う。
外資系:MBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)、A.T. カーニー、ローランド・ベルガー、アーサー・ディ・リトル、サイモン・クチャー、YCP Solidianceなど
日系:ドリームインキュベータ、コーポレイト・ディレクション、経営共創基盤など
総合コンサルティングファーム: 戦略から実行まで、企業の経営課題を解決する。
アクセンチュア、BIG4(デロイト、PwC、EY、KPMG)、アビーム、ベイカレントなど
シンクタンク系コンサルティングファーム: 民間企業へのコンサルティングだけでなく、コンサルティング官公庁など公的機関からの依頼を受けリサーチを行う。
野村総合研究所(NRI)、三菱総合研究所(MRI)、日本総研などが日本における主要なシンクタンク系コンサルティングファーム。
2.3 今後の方向性
デジタルトランスフォーメーションの加速: 企業が競争力を維持するために、AIやIoTなどの先端技術の導入支援を強化している。
ESGとサステナビリティ: 環境保護や社会的責任に対する意識が高まり、ESG投資が拡大している。
グローバル展開と地域特化: 日本企業のグローバル展開が進む中で、現地のビジネス慣習に適応したコンサルティングが求められている。
生成AIの影響: 直近数年の生成AIの著しい発展は、コンサルティング業界において革命的な影響を与えている。従来のアナリスト業務を自動化し、膨大なデータから洞察を引き出す能力により、コンサルタントはより高付加価値な業務に集中できるようになっている。
効率の向上: 生成AIは膨大なデータセットから迅速にインサイトを引き出すことができるため、従来のデータ分析業務の大部分を自動化し、効率を大幅に向上させている。市場規模算出や価格算定などはその代表的な例である。
コスト削減と品質向上: AIの自動化により、コンサルティングプロジェクトのコスト削減と品質向上が実現されている。これにより、クライアントに対する付加価値がさらに増加している。
イノベーションの推進: AI技術を活用した新しいビジネスモデルやソリューションの開発が進んでいる。コンサルティングファームはより革新的なサービスを提供することを期待されている。
3. コンサルタントとして求められるスキルセット
3.1 基本的なスキル
分析力: データを基にした詳細な分析能力は不可欠である。データを収集・整理し、トレンドやパターンを特定することで、問題の根本原因を特定し、実行可能な解決策を提案することができる。
論理的思考能力: 論理的思考を駆使し、複雑な問題を整理、体系化することができる。クライアントに対して説得力のある提案を行うために重要である。特に問題解決のプロセスにおいて、明確で一貫した論理の展開が求められる。
コミュニケーション能力: クライアントとの円滑なコミュニケーションは、信頼関係を築くために非常に重要である。
プレゼンテーションスキル: 提案内容や分析結果を効果的にプレゼンテーションする能力が求められる。
3.2 専門スキル
業界知識と専門知識: クライアントの業界やビジネスモデルに精通している必要がある。特に戦略コンサルティングでは、深い業界知識が重要である。
ITスキル デジタルツールやシステムの活用において、ITスキルは欠かせない。特に、AI、機械学習、クラウドコンピューティングなどの技術に精通していることが求められる。
プロジェクト管理能力: 計画立案、進捗管理、リソース配分、リスク管理などのプロジェクト管理能力が必要になる。
3.3 ソフトスキル
リーダーシップ: プロジェクトチームを効果的にリードし、メンバーのモチベーションを高め、目標達成に向けた指導力が求められる。
チームワーク: 他のメンバーと協力し、円滑なコミュニケーションを通じて、共同でプロジェクトを進める能力が必要になる。
アダプタビリティ(適応力): 新しい状況や課題に迅速に適応し、柔軟に対応する能力が必要になる。
顧客志向と関係構築能力: クライアントのニーズを理解し、それに応じた価値を提供することが求められる。
4. 日本におけるコンサルタントのキャリアパス
4.1 エントリーレベルのポジション
新卒採用とインターンシップ: 多くのコンサルティングファームでは、新卒採用やインターンシップを通じてエントリーレベルのコンサルタントを採用する。
初期キャリアの仕事内容: データ収集や分析、プレゼンテーション資料の作成などのサポート業務からスタートする。
4.2 ミッドキャリア
コンサルタントからシニアコンサルタントへの昇進: より高度な分析やクライアントとの直接的なコミュニケーションが求められる。
スペシャリストとしてのキャリアパス: 特定の業界や機能における専門知識を深めることが求められる。
4.3 シニアレベルとパートナーシップ
マネージャーやディレクターの役割: プロジェクト全体の管理やクライアントとの関係構築、ビジネス開発(新規クライアントの獲得や既存クライアントとの関係深化)が主な役割となる。特にビジネス開発によるプロジェクト案件の獲得はそのままファームの売り上げに直結するため、非常に重要である。
パートナーになるための要件とプロセス: 卓越した業績とリーダーシップ、強力なネットワーキングスキル、ビジネス拡大を推進できるセールス能力が必要である。特にセールス能力に関しては、クライアントへの提案活動や契約獲得に向けた営業活動を行う際に必要になってくる。
5. 日本でのコンサルタントとしての就職活動
5.1 求人市場の状況
近年、米国のインフレ・景気後退懸念などいくつかの要因により欧米に本社を置く外資系コンサルティングファームの一部で本社のリストラやパートナー昇進数の減少、中途採用の募集停止など、採用や待遇に関するネガティブなニュースが報じられており、こうした状況から日本のコンサル業界の雲行きを危ぶむ方もいるかもしれない。しかし、前述の通り日本のコンサル市場は拡大傾向にあり、案件数も年々増え続けている。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)や環境・社会・企業統治(ESG)関連のプロジェクトが増加している。
このデジタル分野の市場成長に伴い、最新のデジタル技術に精通したプロフェッショナル、特に生成AI、データサイエンス、機械学習のスキルを持つ人材の需要が高まっている。多くのコンサルティングファームでは、新たな専門職のポジションを設けている。AIスペシャリストやデータサイエンティストなど、最新のデジタル技術に精通したプロフェッショナルが重宝されている。
しかし、コンサルティング業界内のデジタル化は必ずしも求人数の増加には直結するわけではない。特に、直近の生成AIの台頭は業界の求人市場の将来に大きな変化をもたらしている。生成AIはデータ分析やレポート作成の効率化を実現し、コンサルティング業務の一部を自動化している。この状況が更に発展していけば、従来の業務に割いていた人員が不必要になるため、中長期的には求人数が減少する可能性も考えられる。
コンサルティング業界の求人市場は、一方でデジタル化の波によって新たなスキルセットが求められ、専門職の新設が進む一方で、AIなどの技術進歩が業務の自動化を推進していることにより、従来の職種の求人が減少する可能性があるという二面性を持っている。そのため、求人市場のトレンドとしては、単純労働の代替ではなく、戦略的思考や創造的問題解決を要するポジションへのシフトが見られることが予見される。さらに、国内外の経済状況や市場の変動に敏感であり、グローバルな視点を持つ人材への需要が高まっている。これらの動向は、コンサルティング業界において、柔軟なスキルアップを求める声が増えていることを示している。
5.2 求職活動のステップ
履歴書と職務経歴書の作成:
効果的な履歴書の作成が不可欠。
詳しくは「J-Find取得後のアクションに関するガイドライン - J-Find取得後の職探しプロセスおよびJelper Clubの活用方法」を参照。
ネットワーキング:
業界分析をするためにコンサルティング業界で活躍する社員の生の声を得ることは非常に重要であり、ネットワーキングは不可欠である。
社員訪問: Jelper ClubやLinkedIn、ビズリーチなどのツールを活用することで、社員訪問の手配を効率的に行うことができる。Jelper Clubには、実際にコンサルティング企業に就職した会員が多く存在する。Jelper Club上でそういった会員に対して直接メッセージを送り、社員訪問のアポイントメントを取ることが可能である。
対面イベント: セミナーやカンファレンスに参加して社員の方と対面で交流することができる。Jelper Clubが開催するThe Soirée Tokyoなどには、コンサル業界で活躍するJelper Clubの会員も毎回多く来場する。是非The Soirée Tokyoに参加し、Jelper Clubの会員という共通事項を通じて、積極的にコミュニケーションを図ってみてほしい。
面接:
ケースインタビューと人物面接の準備が重要である。
ケースインタビュー: 問題解決型の質問が一般的で、仮説を立てて検証する能力が評価される。
人物面接: 過去の経験を基にリーダーシップやチームワークのスキルをアピールする。
各コンサルティングファームのカルチャーやパーパスを把握して、各社に沿った人物像を提示することが重要。
6. 日本におけるコンサルタントの待遇
6.1 給与と福利厚生
給与: 他の業界と比較して高水準である。東洋経済新聞社より発刊されている「会社四季報 業界地図2023年度版」の「業界別40歳モデル平均年収」の情報によれば、全業界の平均年収は662万円であるのに対し、コンサルティング業界は1,146万円となっている。これは業界地図のランキングに掲載されている64業界中、第2位に位置している。
福利厚生とその他のベネフィット:
医療保険と年金制度: 包括的な医療保険と年金制度。
研修と教育支援: 海外留学やMBA取得のサポート。
ライフワークバランス支援: リモートワークやフレックスタイム制度。
6.2 ワークライフバランス
労働時間と休暇制度:
労働時間: 繁忙期には長時間労働が求められることが多い。
休暇制度: 法定の年次有給休暇に加え、特別休暇や長期休暇制度。
ストレス管理と健康支援制度:
メンタルヘルスサポート: カウンセリングサービスなどのメンタルヘルスへのサポートへの理解がある。
フィットネスと健康管理: フィットネス施設やスポーツクラブの会員権、健康診断や予防接種。
7. まとめ
日本におけるコンサルティング業界は順調に拡大を続けており、今後数年も成長し続ける市場となることは間違いない。高い給与と充実した福利厚生、そして幅広いキャリアパスが用意されており、魅力的なキャリアの選択肢の一つと言えるだろう。Jelper Clubでは今後も積極的にコンサルティング企業の登録を行い、魅力的なキャリア機会を提供していく予定である。ぜひ頻繁に「Job Updates」を確認してもらいたい。
また、Jelper Clubでは今後もさまざまな業界を解説する記事もパブリッシュしていく。気になる業界について、積極的に「Feed」にて質問や疑問を発信してほしい。
(執筆:Jelper Club編集チーム)
出典・注記
1. 「船井総研RECRUIT SHIP 就活ガイドブック」(船井総研):https://recruit.funaisoken.co.jp/recruit_ship/6193/#:~:text=2022%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E5%B8%82%E5%A0%B4,%E3%81%8C%E8%A6%8B%E8%BE%BC%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82;
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